真の健康と擬健康

真の健康と擬健康
岡田茂吉師御論文です)



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『明日の医術(初版)第二編』昭和17(1942)年9月28日発行

 私は曩に、日本人の全部が殆んど病人であると言つた。そういふ事

をいふと、それは間違つてゐる。世間いくらも健康で活動してゐる人

があるではないかと曰ふであらう。成程外見上だけでいへば、如何に

も健康そうに見へるからそう思ふのも無理はないが、私は之に対し、

詳細説明してみよう。


 私の発見した―病気は浄化作用である―といふ、その浄化作用とい

ふ意味は、言ひ換へれば、一旦固結した処の毒素に対し、自然的に溶

解作用が起るといふ事である。従而、溶解作用発生以前は、何等病気

症状はないから健康体と同様である訳である。即ち、毒素保有者と雖

も、それが固結してゐて、聊かの溶解作用の発生がない時は、健康体

として自己自身もそう信じてゐるし、且つ顔色も体格も健康そうであ

るから、仮令、医家が健康診断を行ふと雖も、今日の医学の診断で

は、浄化発生以前の固結毒素を発見し得られないから完全健康と誤る

のは致し方ないのである。故に、医家の診断に於て、模範的健康とさ

れたものが、間もなく発病して死に到つたといふやうな実例がよくあ

るのは、右の如き理に由るのである。

 従而、毒素を保有し乍ら、浄化未発生の人に対して、私は擬健康と

いふのである。然るに、本医術の診断に於ては、右の如き擬健康であ

る毒素保有者に対し、保有毒素の尽くを知り得るのである。医学に於

て、病気潜伏と称するのは、此保有毒素を想像して言ふのであらう。

そうして医学の診断に於て、血圧計とか、ツベルクリン反応、赤血球

の沈降速度梅毒の血液検査等に表はれたる症状を以て、潜伏疾患を予

想するのであるが、それに対し如何なる臓器又は如何なる局所に潜伏

病原があるかを適確に知り得ないのであるから疾患の発生を防止し得

ないのは当然である。此意味を以てすれば、近来唱ふる予防医学など

は全く意味をなさないのであつて、結局空念仏に過ぎないと私は思ふ

のである。

 昔から、人は病気の器と謂ひ、いつ何時病み患ひがあるかも知れな

いと案じ、又釈尊は人間の四苦は生病老死であるとし、病は避け難い

ものとされてゐるが、それ等は何れも擬健康であるから、何時浄化作

用が発生するか判らないといふ状態に置かれてゐるからである。故

に、真の健康者が増加するに従ひ、右の如き言葉は消滅してしまふで

あらう。

 右の如くであるから、真の健康とは、全然無毒の人間でなければな

らないのである。そういふやうな完全な健康体は、今日の日本人に

は、恐らく一万人に一人位であらう。何となれば、九拾歳以上の長命

者は、右の如き健康者であるからである。然るに本医術によれば無毒

者となり得るのであるから、完全健康体となり、九拾歳以上の長寿者

となる事は、易々たるものである。
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