祖霊の戒告

祖霊の戒告

『明日の医術 第三編』昭和18(1943)年10月23日発行

 元来祖霊は我(わが)子孫に対し、幸福である事を欲するあまり、

不幸の原因である過誤や罪悪を行わしめざるよう常に警戒しているも

のである。しかるにその子孫がたまたま悪魔に魅入(みい)られ、天

則違反の行為ありたる時、それを戒告する為と、犯した結果としての

罪穢の払拭をさせようとするのである。それらの方法として、病気又

はその他の苦痛を与えるのである。これについて二、三の実例によっ

て説明してみよう。

 幼児又は小児が、感冒のごとき熱性病に罹るとする。普通の浄化作

用であれば、本療法によって効果顕著であるに拘わらず、予期のごと

き効果がない事がある。その場合、特異な症状としては、頻繁(ひん

ぱん)な嘔吐である。いかなる食餌を与えても吐瀉(としゃ)してし

まう。従って、衰弱日に加わり、ついに生命を失う事になるのであ

る。そうしてこの症状は、ほとんど助かる見込はないといってもいい

のである。

 これは全く、右に説いた祖霊の戒告であってその原因としては、父

親が夫婦の道を紊(みだ)したる罪による事が多いのであって、世人

はこの事を知らないのであるが、注意するにおいてすくなからずある

事を知るであろう。全く一時的享楽の為、大切なる愛児の生命をまで

犠牲にするという事は、国家の為、自己の為、まことに遺憾の極みで

あるが、これは全く霊的知識がない為である。かような場合、祖霊と

しては一家の主人を犠牲にする事は一家の破滅となるから、止むを得

ず子女を犠牲にするのである。

 次に、こういう例があった。それはある家庭での事であるが、その

家の現戸主である四十歳位の男、仏壇があるに拘わらず、それに向っ

て手を合した事がないので、その娘が心配し、右の戸主の弟と相談の

上、弟の家に移したのである。しかるに、程経て弟は兄の家に赴(お

もむ)き、祖先伝来の仏壇を弟に確かに移譲したという証明書を書い

てくれ――と兄に要求したのである。そこで兄は承諾し、筆をとって

紙に書こうとする刹那、突如その手が痙攣を起し舌が吊り、書く事も

どうする事も出来なくなったのである。それから一二年間、あらゆる

療法を受けても治らない為、私の弟子の所へ治療を求めに来、その際

右の娘が語ったという事を、弟子から聞いたのである。これは全く祖

霊が正統である兄の家から、一時的ならいいが、永久に離れるという

事は承知が出来ないからそうしたのである。何となれば、右のような

結果として、将来家系が紊れる事になるからで、家系が紊るれば家が

断絶するという危険があるからである。

 次に、世間よく宗教的病気治し又は行者等が、大抵の病気は祖霊の

憑依のように言う事があるが、誤りもはなはだしいのである。何とな

れば、祖霊といえどもその意志感情は、現世の人間と変りはないので

あるから、常に子孫を愛し、子孫の為を思うのは勿論である。従っ

て、子孫の行為のあやまれる場合、戒告等の為、やむに止まれず憑依

するのであるという事を知るべきである。